易の故事・成句(下段:原文表記) 意味 出典/記載日
家を正しくして,天下定まる。
正家而天下定矣。
家庭をきちんとすることによって,はじめて天下も治まる。家庭をきちんとするには,父は父らしく,子は子らしく,兄は兄らしく,弟は弟らしく,夫は夫らしく,婦つまは婦らしくあらねばならない。 家人卦(37)・卦辞
(2002年3月30日)
口を尚たっとべば乃すなわち窮するなり。
(有言不信,)尚口乃窮也。
(困難に際しては,いくら正論を言っても信用されないので,)口先だけでその困難をのがれようとすれば,かえって困窮するということである。 困卦(49)・卦辞
(2002年3月30日)
君子は豹変す。
君子豹変。
君子は聖人の感化をうけると,豹の皮の文様のように,はっきりと善に従うようになる。これが本来の意味であるが,現在では転じて,都合が悪くなると急に自分の立場を変える,という悪い意味に使われている。 革卦(49)・上六
(2002年3月30日)
大人は虎変す。
大人虎変。
大人たいじん(徳のある立派な人)は,秋の虎の皮の文様のように,見事に変化する。 革卦(49)・九五
( 2002年3月30日)
積善の家には必ず余慶有り。
積善之家,必有余慶
善いことを積み行ってきた家では,かならず子孫に福がおとずれるという意味。 坤卦(02)・文言
( 2002年3月30日)
虎視たんたん。
虎視耽耽。
虎が下方をジッと睨んでいる様子。転じて,力の強い者が静かに機会を狙っていることを意味するようになった。 頤卦(27)・六四
( 2002年3月30日)
窮すれば変ず。変ずれば通ず。
窮則変。変則通。通則久。
何事も,切羽詰まれば変化する。変化すれば,新しく通じる道が生じる。新しく通じたものは永く続くものである。 繋辞下伝(第2章)
( 2002年3月30日)
招かざるの客来たる。
不速之客来。
困難に陥っても,思いがけない3人の助っ人が現れる。彼らに敬意を尽くせば困難に打ち克って最後には吉になる,という意味。転じて現在では,招待もしないのに迷惑な客人がやって来た,という悪い意味で使われている。 需卦(05)・上六
( 2002年3月30日)


易の雑学 参考リンク その他
中国で世界最古の麺発見。 WEDGE 2006年1月号 (VOL.18 No.1)によると、中国青海省民和回族自治県の喇家遺跡でこのほど、世界最古とみられる麺が発見された。遺跡は約4000年前の新石器時代のもので、これまで2000年前とされてきた麺の歴史や、起源の研究に役立つ新発見として注目されている。発掘関係者によると、見つかった麺はラーメンに酷似した黄色い細麺で、長さは約50cm、直径約3ミリ。遺跡は洪水や地震などで埋まったと見られており、麺は3メートルにおよぶ堆積層の下から掘り出した器の椀の中に残っていた。出土時、椀は伏せられた状態で、中は後から入り込んだ泥で詰まっていたため、泥が椀を密封する役割を果たし、麺が保存されたとみられている。専門家によると、麺はアワとキビで作られていた。麺の起源に関しては、中国やイタリア、中東説などがあり、中国の文献には約1900年前に麺を作ったとの記録もある。今回の発見は、中国の黄河上流起源説を補強する材料となるという。 - 2006年1月8日
明治・大正時代の「大正」は,「亨以天之道也」に由来し,明治の次の元号の候補は「大正」,「天興」,「興化」であったことが「大正天皇実録」に記載されている。 - 2002年3月30日
有名な進学校である東京の開成高校の「開成」は「夫易務」(それ易は,物を開きて,務めを成す)易経繋辞上伝(第11章)に由来する。意味は,易によって知識(物)を開き,事業(務め)を成す,ということ。 - 2002年3月30日
「観念的」や「頭でっかち」の意味で「形而上学的」というが,この「形而上」は易経繋辞上伝(第12章)の「是故形而上者謂之道,形而下者謂之器」(是ゆえ,形よりして上なる者,之(これ)を道と謂(い)い,形よりして下なる者,之を器(うつわ)と謂う)に由来する。意味は,「形をなす以前の,目に見えない無形のままなる陰陽の変化を道といい,形となり,目で見えるもので,陰陽の変化を受け入れることができる物(万物)を器という」ということ。 解釈の詳細は「易と共時性」を参照されたい。 2002年3月30日
易には何種類かのクラスの人が登場する。大人たいじん(おとな,ではない),君子くんし,小人しょうじん(こども,ではない),賢人である。大人は「徳の大きい立派な人」という意味で,君主クラスの人を指す。現在の日本ではめったにお目にかかれない。小人は「小賢しい知恵や知識があっても,徳が薄い人」という意味。現在の日本のエリートの大半がこれに相当する。君子は「大人」ほどの徳は無いが,「小人」よりも徳はある,普通の「おとな」を意味する。大半の日本のサラリーマンは君子である。エライ順は「大人」>「君子」>「小人」である。昔の中国では「徳」と「才能」を比較して,「徳」 > 「才能」なら「大人」,「徳」 = 「才能」で君子,徳」 < 「才能」なら「小人」と大別して考えていたようである。現在の日本はまるで反対であることが何を意味しているか非常に興味深い。 2002年3月30日