■ 爻と状態関数

全く天下りではあるが,卦爻の陰・陽に対応して量子力学での2準位系であるスピン状態を対応させる。スピンUpが陰であり,Downは陽である。正確に言うと,陰・陽は老陰・少陰・老陽・少陽の4種類であり,老陰は少陽に,老陽は少陰に遷移しやすく,少陰・少陽が安定状態である(老陰・老陽状態から少陽・少陰状態への遷移確率はそれぞれP(6)=1/16, P(9)=3/16と小さい)。従って,当面議論を簡単にするために2準位系で議論を開始するが,後に4準位系に議論を発展させる。老陰・老陽状態から遷移すること,その事象こそが,易の非常に重要な本質の一つである。なぜなら,爻の状態遷移のありかたによって易では占断が行われるからである。(詳細は  易の占い方法を参照

状態の表記方法としてディラックのケット・ブラを用いる。少陰は |Up>, 少陽は |Dn>とすると,爻の状態関数は一般に以下のように記述できる。

|爻の状態> = α|Up> + β|Dn>
ここで,α'*α + β'*β = 1, α'とβ'はそれぞれα,βの共役複素数。

|卦の状態> = |初爻>|二爻>|三爻>|四爻>|五爻>|上爻>
であり,各状態のテンソル積で全体の状態を記述する。易の占断の過程は,このα,βの値を決定する過程であると言える。古来より伝わる本筮法(18変の法)では,3変ごとにα,βの値を0か1に決定しており,これを6回繰り返して卦を決定する。 決定された卦,例えば井の卦は初爻から順に|Up>|Dn>|Dn>|Up>|Dn>|Up>でその状態が表される。

|井> = |Up>|Dn>|Dn>|Up>|Dn>|Up>

易には(閑話休題)で述べたように,構造的に時間経過が取り込まれている。|井>は時間の経過に伴って変化するが,変化の仕方は量子力学に則ってユニタリー時間変化を想定する。 従って,一定時間 t 経過後には以下のように書けるものとする。

|卦, t> = Exp(-iHt) |井>
ここでHは系のハミルトニアンである。
この|井> のケット表現は爻の間の相互作用はないことを前提としているが,実際の易では応爻の概念(初爻と四爻,二爻と五爻,三爻と上爻は相呼応して互いに影響を及ぼす)があり,ある種の相互作用を考える必要がある。しかし,当面は以後の量子易学では爻の間の相互作用は考えないこととして議論を進める。

(2001年11月24日;第一版 Copyright 寒泉)