■ 易は占いか?


  今の世の中では占いが大流行である。血液型占い,動物占い,西洋占星術などである。これらの占いには共通する一つの事がある。それは,占いの結果は初期条件(大半は生年月日であるが)によって既に決まっているということである。各々の占いの違いは、初期条件の組み合わせ方とその評価のみである。これらの初期条件型占いの代表選手は四柱推命と西洋占星術であろう。

これに対して,初期条件で答えを出さない”占い”が洋の東西で各々一つ存在する。東洋では易であり、西洋はタロットである。易は正式には易経といい,今から4千年以上前に(ラーメンの歴史とどっちが古い?)中国に誕生したといわれている。易では,陰(- -)・陽(-)を表す爻(こう)が6爻集まって卦(か,又は,け)を構成する。卦は全体で64卦あり,それぞれの卦と卦中の6爻に意味が付けられている。3千年程前の周の時代(1122-221 B.C.)に始祖文王と周公によって卦・爻の意味付けがなされ,後に孔子(551-471 B.C.)によって主要な解釈が施されたという。
  易経の英語名はIChing(いーちん)である。易は17世紀後半にはヨーロッパに伝えられ,「変化の書(Book of Change)」として古くから紹介されている。興味のある方はアマゾンで「i ching book of change」で一度検索されたい。その本の数の多さは相当なものである。しかし、原理まで含めて解説する本は少ないと思える(筆者が読んだのは数冊で、その内容はこのホームページの英語版にて紹介する)。
易経が欧米に伝わったのは18世紀の初頭のようである。中国でのキリスト教布教をしていた宣教師達によって易経のラテン語訳が作られた。当時の偉大なる哲学者であり数学者であったライプニッツは,これと2進法の関連に大きな関心を抱いたといわれている。(ライプニッツ著作集第10巻)

ライプニッツは晩年の著作「単子論」で予定調和の概念を提唱したが、その構成は量子易経の構成と似た部分も多く、このホームページでも紹介している⇒易と単子論。 また量子物理の先覚者であるニールス・ボーアは,量子物理学の相補性原理と易があまりに似通っていることに感銘を受け,自分がナイト(騎士)に叙せられた時に,易のシンボルを紋章に採用したほどである。



  易の占い方には簡単なものから複雑なものまで何種類かある。 しかし,全ての方法に共通していることは,ランダム(乱雑)な二者選択を重ねて,より一層ランダムな状況を作り出すことで最終結果を得ることである。そうすると,ランダムな積み重ねの中にある一定の規則性が現れ,この規則性に対して吉凶を付与することにより,決断を促すのである。ランダムな過程の積み重ねによってある規則性が出るのは,様々な温度条件などのもと,奇麗な雪の結晶が出来上がる過程に喩えることができる。もし古代の中国で,高解像度の虫眼鏡があったら,出来上がった結晶の種類に対して,吉凶を付与した易が出来ていたとしても不思議ではないだろう。

  社会では一般に, 自分で決断するプロセス全体を称して意思決定と呼ぶ。 意志決定とは,自分では判断できる事も,できない事も,何らかの形で判断し,決断を下すことなのだ。大事なことは,自分で論理的判断できない場合,どのように決断するかである。
  自分で是非・善悪が判断できないことはいくらでもある。大は国家の命運を賭けた戦争の出陣時機(首相・大統領・皇帝の悩み)から,会社での新規事業への進出の是非(いくら売上・費用の数字を積み上げても,将来の成功・失敗は判断できないという社長の悩み),結婚相手の選択(もてる人の悩み),小は今夜の晩御飯のオカズ(単純に優柔不断な私の悩み)まで,世の中には選択肢が多すぎて自分の意志を論理的に決められないことが多くある。こういう場合にこそ易が有用である。
  事実,古代中国にて発生した易は,主に王が戦争について意思決定するための道具(ツール)に用いられていたのである。易には450通りの選択肢がある。正確に言うと,4,096通りの選択肢を一旦450通りに絞り込んで,その中から自分の"今"ある状態または進もうとしている状態を写し出すのである。そして,各々の状態に対応した意思決定のアドバイスを提供してくれるのである。"今"ということの意味は別途考えてみたいが,非常に重要なポイントであり,現在人が最もおろそかにしている概念と思われる。

  易は,情報科学用語でいうと意思決定支援ツールであり,世間一般の占いとは性格を異にするものなのだ。

  ユングによれば,彼の患者と実際に筮竹による易占いを行い,相当な数的中したと述べている。4096通りの状態から選び出すにしては驚異的な確率である。ユングは易により 共時性原理を確信し,集合的無意識による深層心理学の分野を切り開いた。

易が何故高い確率で的中するのか,その理由を訊ねるのは古来よりタブーとされてきた。しかし,このホームページでは易は, ベルの定理に裏付けられた共時性を通信の基礎とした 量子場脳理論モデル と解釈することで,科学的に説明することを試みる。最終的には,自然法則の一表現としての量子易学を構成することを目的とする。
  いづれにしても,まず易を経験(左欄)してみて頂きたい。このホームページでは,古来より最も正統的である本筮法(18変の法)を採用している。
易を効果的に行うためのポイントは以下の3点である。

1. 自分では論理的に決められないテーマであること。
  例えば,1+1は論理的に決められるから意志決定ではなく,易のテーマにならない。

2. 真心を持ち,思いを込めてマウスをクリックすること。
  クリックしたその瞬間が"今"であり,貴方の真心が見えざる神の手と繋がる瞬間である。
真心を持っていること,及び決断すべき事を強く思い込むことが非常に重要 である。悪巧みには易は応えないし,思いがなければ天に通じない。
量子易学的には以下の5個のプロセスで構成されていると考えられる。

①思いを込めた真心クリックによって,
②暗在系の 宇宙波動関数の”今”が観測され,
③観測の結果,波動関数の重ね合わせ状態が固有状態に収縮し,
④スピン一重項状態での 非局所的な相互作用によって,
⑤収縮した暗在系の状態が,明在系の易の卦に伝達されたもの
詳細は後述する。

3. 同じテーマで2回以上連続してクリックしないこと。
("三筮は告げず"という卦辞(蒙)の警告が易にはありますぞ!)

ただし,当たるも八卦,当たらぬも八卦,結果については責任は一切負いません。
悪しからず。
(2001年11月25日;第二版、2023年8月30日一部追加修正、 Copyright 寒泉)